MSコネクタのおはなし
はじめに
MSコネクタと言えば、数多く存在するMIL規格(Military Standard=MS)コネクタのなかで、特にMIL-DTL-5015規格(*注) 準拠のコネクタを指します。これは、MIL-DTL-5015規格が、米軍において最初に制定されたコネクタ規格であり、産業界にもっとも普及した軍用コネクタの規格だからです。
(*注)
1939年にAN9534規格が制定され、1949年にAN規格をもとにしてMIL-C-5015規格が標準化されました。MSコネクタが、AN形と言われるのはこの為です。その後、MIL-DTL-5015規格と改称し、2009年に民間規格のSAE-AS50151に移管されて、MIL規格から姿を消しました。
特長など
MSコネクタは、MIL規格コネクタのGrand Daddy と呼ばれています。基本的な性能は今でも過不足なく、70年以上前の設計であるにもかかわらず現代のハイテク産業機器においても大変多く使われています。主な特長と利点は、ねじ式嵌合、メタル製の頑丈な筐体、信号から電源までカバーする豊富なインサート配列、幅広い電線サイズへの適合などですが、最大の利点はその普及性です。世界にもっとも広まった丸型コネクタは、MSコネクタと言えます。輸出入される産業機器のインターフェースにMSコネクタが使われていれば、嵌合コネクタの入手に困ることはまずありません。
アンフェノールのMSコネクタ
アンフェノールは「MSコネクタ」を最も多く販売しているコネクタメーカです。もともと、AN規格を主導したのはアンフェノール社であり、第二次大戦中は絶縁体が青い樹脂製のAN形(Army Navy)コネクタを量産しました。そして、1947年にベンディックス社(のちのアンフェノール社エアロスペース事業部)が 、絶縁体が"SCINFLEX"というネオプレンゴム製のAN形コネクタを開発しました。これは、コンタクトを衝撃や振動から守るのと同時にコネクタに防滴性を持たせるためです。このような経緯を経て、アンフェノール社は、産業機器用途と防衛用途に向けて、MSコネクタのラインアップを拡充してきました。
下表で、アンフェノールのMSコネクタ一覧を示します。これらのコネクタは、インサート配列が同じであれば相互互換性があります。
MIL-DTL-5015規格の主要特性
MSコネクタ、すなわちMIL-DTL-5015規格準拠のコネクタは、今日の丸型コネクタの源流であり、設計者が新しいコネクタを開発するときはMSコネクタの電気的特性を必ず参考にします。主な特性を以下に記します。
コンタクトサイズ | 定格電流 AMP | 電圧降下 mV | 電線サイズ |
---|---|---|---|
#16 | 13 | 49 | AWG16以下 (1.25mm²以下) |
#12 | 23 | 42 | AWG12以下 (3.5mm²以下) |
#8 | 46 | 26 | AWG8以下 (8mm²以下) |
#4 | 80 | 23 | AWG4以下 (22mm²以下) |
#0 | 150 | 21 | AWG0以下 (50mm²以下) |
サービスレーティング | 定格電圧 | 耐電圧 V AC(rms)1分間 |
絶縁抵抗 | |
---|---|---|---|---|
DC | AC(rms) | |||
INST | 250 | 200 | 1000 | 5000MΩ以上 |
A | 700 | 500 | 2000 | |
D | 1250 | 900 | 2800 | |
E | 1750 | 1250 | 3500 | |
B | 2450 | 1750 | 4500 | |
C | 4200 | 3000 | 7000 |