高耐久VME64xコネクタの使い方

民生部品の軍事転用、いわゆるCOTSが盛んに行われる中、ミリタリー用途の様々な搭載機器にVMEバス規格が使われています。VMEバスのような民生規格を使用することで、ハードウェア開発に掛かる費用を低く抑えながらミリタリーシステムの性能向上を容易に図ることが出来ます。

しかしながら民生品の軍事転用は慎重に進めなければなりません。すなわち、民生品を厳しいミリタリー環境に晒すことは、容易に誤動作や破損を引き起こします。航空機搭載機器であれば、急激な温度変化や強烈なGを伴う振動や衝撃に晒されます。艦船搭載機器であれば、塩水環境への暴露や、高湿度環境に晒される可能性があります。陸上での無線機器などでは、砂や埃がつきものです。またミリタリー用途では、機器は概して手荒に扱われるため、部品の強靭さも必要な性能の一つになります。

当然ながら民生VMEバス用のコネクタは、これらミリタリー環境を想定して作られたものではないため、それ単体での使用は機器の信頼性を著しく損なうことが予想されます。強靭且つ気密性が高く、外部の振動や衝撃を内部に伝えない特殊な構造の筐体が使用できれば、民生品の使用は容易ですが、スペースや重量の制限が厳しいミリタリー用途でこのような筐体を使用することは、決して容易ではありません。また屋外でのメンテナンス時には、いくら耐環境性能の優れた筐体であっても、脆弱な民生品を保護することは出来ません。

アンフェノールのVME64xコネクタは、このようなジレンマを解決すべく開発されました。金属性のシェル、ライトアングルコンタクトのモールド処理、静電気放電保護構造、双曲線ソケットコンタクトなど、独自の特徴的な構造を具備することで、ミリタリー環境で信頼性の高いVMEバスを実現します。VME64基板に取り付けられた民生VME64コネクタを取り外し、そこにそのままアンフェノールのVME64xコネクタを取り付けることが出来ます。

またアンフェノールのVME64xコネクタでは光ファイバや差動伝送を使った高速通信が可能なため、VME基板を超えた帯域の高速伝送を実現できます。

高耐久VME64xコネクタの特長-その１-　強靭な保護構造

モジュール側コネクタとバックプレーン側コネクタのアルミ合金シェルが、ミリタリー環境で加わる様々な衝撃から脆弱なコンタクトを保護します。
またモジュール側コネクタのコンタクト屈曲部（ライトアングル部）を樹脂モールドすることで、取り扱い時の不慮のピン曲がりを防ぎます。

高耐久VME64xコネクタの特長-その２-　静電気放電保護（ESD）

モジュール側コネクタはインサート（インシュレータ）が金属製のシェルで覆われ、ピンコンタクトを奥に配置しています。この構造（ESD構造）を採用することで、メンテナンス時などに不慮に静電気がコンタクトを通じてモジュール内部に伝わってCPUなど高価な実装部品が破損するのを防ぎます。静電気は金属製モジュールカバーに短絡します。

高耐久VME64xコネクタの特長-その３-　ハイパーボロイドコンタクト

双曲線上に中央部が盛り上がった特殊な内部形状のスリーブを持ったソケットコンタクトを使用することで、耐振動衝撃性能が向上し、コネクタの嵌合力を低下させます。

高耐久VME64xコネクタの特長-その４-　高速差動伝送

P0ベイに2mmピッチで配した114本のコンタクトは
50Ωにインピーダンスマッチしています。2ピン1ペアで差動伝送する場合、差動インピーダンスが100Ωになるようピン間隔と絶縁材料を調整しています。グラウンドピンの配置を最適化すれば、最大約2.0Gbpsの高速差動伝送が可能です。

高耐久VME64xコネクタの特長-その５-　高速光伝送

P0ベイのインサートを取り除き、代わりに専用光コネクタを挿入して、高速光伝送を実現することが出来ます。光端子にはMTフェルールを使用するため、最大で12ラインのマルチモード又はシングルモードの光ファイバを組み込むことが出来ます。

電気特性，機械特性

電気特性，機械特性