LRMコネクタの使い方
最新鋭アビオニクス設計に求められるあらゆる条件をクリア-した世界最高水準のボードコネクタです。いかなる環境下においても、極めて高い信頼性能を誇るアンフェノールボードコネクタの最上級モデルです。
LRMコネクタの特長-その1- 極めて軽い嵌合力
MIL-C-55302/166-170に適合したB3ブラシコンタクトの採用により、多芯コネクタの欠点である嵌合・離脱力の増大を大幅に低減できます。
従来のピン/ソケットコンタクトの最大70%の嵌合・離脱力でご使用いただけます(特性表参照)。
LRMコネクタの特長-その2- 圧倒的な耐久性
B3ブラシコンタクトは、100,000回もの嵌合・離脱に耐える極めて信頼性の高いコンタクトです。
LRMコネクタの特長-その3- 脅威の耐振動・衝撃性能
嵌合時に、従来のピン/ソケットコンタクトは電流経路が2または4本であるのに対し、7本の線材を持つB3ブラシコンタクトは13~70本もの電流経路を形成できるため、極めて高い耐振動特性・耐衝撃特性を発揮します(特性表参照)。
またブラシコンタクトは極めて高い耐フレッチング腐食性能を持ちます。フレッチング腐食とは、空気中で金属と金属が繰り返し微小な滑りを生じながら擦れ合うことで生じる金属表面の損傷のことを言います。コンタクト表面の金めっきが剥がれ、下地ニッケルの酸化物や、酷い場合素地の銅酸化物がコンタクト表面を覆うと、接触不良の原因になります。
米最新鋭ステルス戦闘機F-22へのLRMコネクタ採用に際し、非常に過酷なフレッチング腐食耐性試験(0.25mmの変位を6000万サイクル)を実施したところ、従来のピン/ソケットコンタクトを持つコネクタは全て接触不良が発生したのに対して、LRMコネクタのみ接触不良は発生しませんでした。
LRMコネクタの特長-その4- 確実なESD(静電気)対策
モジュールLRMはカードモジュールに取り付けられている為、静電気等の大電流がコネクタを通して回路に流入すると、CPU等の高価な実装部品を破壊する恐れがあります。
LRMは静電気保護構造(ESD保護構造)を採用しており、最大25000Vまでの静電気が未嵌合状態のLRM嵌合面に帯電しても、特殊インサートが効果的に電流を外部に放出し、回路に大電流が流れるのを遮断します。これによりメンテナンス性が格段に向上します。スタガードグリッドタイプ及びGEN-Xタイプは標準装備。
LRMコネクタの特長-その5- LVDS伝送可能なインサートアレンジ
100Ωインピーダンスマッチしたインサートアレンジを用いれば、基板対基板のインターフェースにおいて1.2Gbps以上のLVDS伝送が可能になります。
LRMコネクタの特長-その6- 豊富なインサートアレンジ
光ファイバーコンタクト(#16,#20Termini),同軸コンタクト(Coaxコンタクト),パワーコンタクト,RADSOK®コンタクトとのハイブリッドインサートを利用することで、通常、複数のコネクタを要するインターフェースを高機能LRM1つに置き換えて、省スペース化・軽量化・低コスト化を実現することが出来ます。
モジュール基板配線ピッチ
LRMには、2種類のシリーズ(スタガードグリッド,Gen-X)があり、実装基板の配線密度に応じてお選びいただけます。
スタガードグリッドLRMは0.1インチ×0.05インチピッチでコンタクトが配置され、モジュール基板の配線ピッチは0.025インチになります。
Gen-X LRMはより高密度な0.075インチ×0.06インチピッチでコンタクトが配置され、モジュール基板の配線ピッチは0.0375インチになります。
コンタクト数(ピン数)
1ベイ(インサートブロック)あたりのピン数や、同軸コンタクトとのハイブリッドアレンジは極めて豊富です。またベイの数は1ベイ,2ベイ,3ベイの3種類からお選びいただけます。詳しくはLRMカタログをご覧下さい。
SEM-E(Standard Electric Module Format E)サイズのモジュールには、360ピン入りのスタガードグリッドLRMがご使用いただけます。またGen-X LRMを使えば472ピンまで高密度化することが可能になります。
基板への実装
モジュールへの実装は、全シリーズともSMT(表面実装)になります。モジュールの厚みに応じて最適のテイル幅をお選びいただけます。詳しくはLRMカタログをご覧下さい。
マザーボード(バックプレーン)への実装は、スルーホール半田付けになります。プレスフィットコンタクト仕様の場合は、圧入方式になります。
[電気特性,機械特性]
項目 | 特性 | |
---|---|---|
使用温度範囲 | -65℃~+150℃ | |
定格電流 | Max3.0A/コンタクト | |
絶縁抵抗 | 1000MΩ | |
耐電圧 | Min100Vrms@Sea Level | |
接触抵抗 | Max20mΩ/コンタクト | |
耐振動特性 | 正弦振動 | MIL-STD-1344 2005 IV 20G(peak),10~2000Hz,12hrs |
ランダム振動 | 22.2Grms,55~2000Hz,60hrs | |
耐衝撃特性 | 正弦半波 | MIL-STD-1344 2004 A 50G(peak),11ms,18回 |
ノコギリ波 | MIL-STD-1344 2004 E 50G(peak),11ms,18回 |
|
耐久性 | Min500回 | |
嵌合離脱力 | Max42.5g/コンタクト (=8.5kg/200pinコネクタ) |
[使用材料]
部品 | 母材質・表面処理 |
---|---|
コンタクトブラシ部 | 母材質:Be-Cu(ASTM B197) めっき:Ni下地(AMS-QQ-N-290)Auめっき(ASTM B488) |
コンタクトボディ (モジュール側) |
母材質:Be-Cu(ASTM B534 C17500 or C17510) 表面処理(基板実装部):60/40 or 63/37半田ディップ(J-STD-004,005,006) めっき(その他):つや消し半田めっき(ASTM B579) |
コンタクトボディ (バックプレーン側) |
母材質(スリーブ):ステンレス鋼(AMS 5514) 母材質(その他):黄銅(UNS C33500) スリーブ表面処理:黒化処理(MIL-DTL-13924),コンフォーマルコート(MIL-I-46058) その他表面処理(基板実装部):60/40 or 63/37半田ディップ(J-STD-004,005,006) その他めっき:Ni下地(AMS-QQ-N-290)Auめっき(ASTM B488) |
インシュレータ | PPS(ポリフェニレンサルファイド)又はLCP(液晶ポリマー)(MIL-M-24519) |
シェル | 母材質:アルミ合金6061-T6(AMS 4150),めっき:無電解Ni(SAE AMS 2404) |
ESDシェル | 母材質:アルミ合金6061-T6(AMS 4150) 表面処理(グラウンドタブ):イリダイトクロメート処理 表面処理(その他):黒色アノード処理(MIL-A-8625)+エポキシオーバーコート |
誤嵌合防止キー | 母材質:ステンレス鋼(AMS 5640),表面処理:黒化処理(MIL-DTL-13924) |
ガイドピン | 母材質:Be-Cu(ASTM B196) めっき:Ni下地(AMS-QQ-N-290)Auめっき(ASTM B488) |
採用プログラム・採用機器
LRMコネクタは、その優れた耐振動・衝撃性能から、F-22,F-16,F-18 E/F,JSFをはじめとする米戦闘機の発展型目標指示前方監視赤外線(ATFLIR),アクティブ電子スキャンレーダ(AESA)、改善型戦術データリンクシステム・モデム(IDM),指向性赤外線妨害装置(DIRCM),機上搭載・目標標定照準システム(Sniper Xr ATP)や、RAH-66などの米ヘリコプタの新型目標照準・暗視装置(Arrowhead)に採用されています。